鑑賞するだけではなく、使うデザイン

プロダクトデザインやWEBデザインは、ただ「見られる」だけではなく「使われる」ことも意図しなければいけません。見たところ高級であったり清楚であったり、様々なイメージを人に与えることはできていても、その実ものすごく使いづらい、ということでは意味がありません。「使いづらい」と人が感じた瞬間にそのモノは「価値」を失います。デザインとは恐ろしいものです。「本質」がどうあれそのものの価値を変化させてしまう力があるからです。「クリエイティブ」に優劣はありませんが、目的のあるクリエイティブであればそれを達したかどうかという指標はあります。
「なにかを作る」ということは産業の基本です。なにかを作って誰かに使ってもらおう、作ったモノを通じて世の中を便利にしよう、という取り組みは、人が文明を持ち始めた頃からあるのではないでしょうか。「何かを創り出す」ということを覚えてから、人はデザインを覚えました。デザインによってモノの価値が上がるということを知りました。それから今日まで、「使うためのデザイン」は商品開発の根幹を占めるようになっています。いかに使いやすいか、ということは商品の価値を決定づけます。いくらスペックに優れていても、使いづらいと人が感じた瞬間に一気に価値が下がります。中に込められたメカニックや素材の素晴らしさよりも、実際に使った際の「使用感」の方が大切なのです。「良いプロダクトデザイン」とは、「使用者」のことを深く考えることができたデザインといえるのではないでしょうか。ユーザーの利用シーンを巧く想定し、様々なケースにおいてもそのデザインの妙で使用感を損なわない、そんなデザインのことです。
そのようなデザインは簡単には実現できるものではありません。その商品が属するカテゴリーに対する深い知識と、その他の開発者との調整など、1つの商品を作るためには乗り越えなければいけない様々な壁が存在します。そのようなことの一つ一つを乗り越え、且つユーザーを想定するということはなかなかすぐには巧く行くものではありません。これはただ単純にデザインのセンスやスキルが問われるのではなく、いかにユーザーと向き合うか、ということになるのかもしれません。それはもしかするとデザイナーではなく、開発の舵を切る担当者から持ちかけられることかもしれません。デザイナーが満足したものがベストであるという保証はどこにもないのです。 企業によっては顧客に直接アンケートなどをとり、商品をブラッシュアップしようと試みている場合も多いようです。実際の利用シーンには開発時に想定していなかった局面も多々あるのです。そして長く利用した際の劣化の度合いや馴染み具合などはやはりユーザーでなければわからないものです。「使いやすさ」には、時には「理屈」が負けてしまうことがあります。それが商品を作り上げる最大の醍醐味でもあるのです。何かを作り、人に使ってもらうということはとても難しいことです。ですが、利用者の生活の深い部分に関わることも多いですから、やりがいもひとしおなのです。「使うためのデザイン」は、簡単に答えを出すことが出来ません。とても奥が深いものなのです。

 
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